死ななきゃOK

死んだ方がいい、死にたくない、いろいろあるかもしれんけど、とりあえず、死ななきゃOK。っていつも言えたらなぁ・・・

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2009.10.12 23:59
 以前、DVDレコーダーに録画しておいた、クリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』を観ましたよ。

 かなり考え込んで作ってある映画ですね。

 見ている「どちらサイド」の人間にも、均等に感情のしこりを残さないようにしたりしてあったりとか。いかにも、「映画」というものの酸いも甘いも知っている人が作成したというのがよくわかります。たしかに、黒澤明ならもっといいものが出来たかもしれませんが、こういう映画を今の日本人が作れないというのも、よくわかります。「人間」と「人生」へのアプローチが必要ですからね、こういう風に作るには。

 ああしてやろう、こうしてもらおうというような、「下心」があっては書けないストーリーですので、表現者であると思ってる人は一度見てみるとよいと思います。「表現」のお手本だと思うので。
 たとえば、日本兵の手紙のシーンがほとんどないように見えますが、間にはさむ捕虜となったアメリカ兵の持つ手紙がそのメタファーで、より現実が残酷に見えるようにしてあるんですよね。戦争反対とか戦争は善悪がないとか、小学生でも言えるようなことではなく。

 「天皇陛下万歳」という日本兵が持っている、劇中でも三唱されて実行されるイデオロギーに似たものを、アメリカ兵の母が「正義のために戦って」と言っていることを通じて、日米だけではなく世界に向けて、その手紙の「はかなさ」やら「悲しさ」やら、複雑で言葉だけでは表現できないものを「映画」で表現しているのです。

 ここで安易に「日本兵の母の手紙」なんてのとか、その手紙の行き来は大変だったとかいうエピソードを入れたら、それは台なしです。なぜって? そういう映画じゃないんです。それを入れてしまったら、「表現」じゃなくて、ドキュメンタリーなんですよ。

 日本兵の母が膨大な手紙を送ったのは、兵士を送りたくなかった妻の姿はもとより、戦況が日本よりひどくないアメリカ兵が持っている母親の手紙から「想像」できるんです。そして、その手紙を運ぶことが大変なのも、郵便担当の軍人が座ったまま絶命してることからも「想像」できるんです。そういうことまで逐一描いていると、そこに感情が行ってしまい、本筋がぼやけてしまうんです。

 それをわかった上で監督が、こういうストーリーにしたんです。単なる「感動」だけでなく、理性も働かせながら、かつ感情にもアプローチしている、きわめて映画の力を理解した、作品のつくりなんです。

 そういうわけで、「知ってもらおう」という意図で作られたドキュメンタリー要素のあるドラマ『硫黄島~戦場の郵便配達~』よりもメッセージは直接的ではないですが、より、共感を覚えやすいようにしてあるんですよね。してあるという言い方はよくないですけど、つまり、無知な人に「教えよう」という意図ではなく、誰しもが持っている価値観、つまり心に響くように工夫して描いてあるんですよね。それが、表現のお手本だと言えるわけです。

 

 日本人がよく陥りがちな表現だと、栗林中将や西中佐が優秀な軍略家であったという表現をするのに、その「活躍」を描くでしょう? でも、この映画でそれを入れては、ストーリーの邪魔になるんです。それではタイトルを「硫黄島の戦い」にしなければなりません。

 栗林らが優秀であったことを表現するのには、「天皇のために死ね」という空気の中で「生きて戦え」という戦術を採ることだけで、表現できることなんです。

 そこには、「なんでもかんでも盛り込まない」という、取材対象に感情的に引っ張られすぎない冷静さが必要なのです。たぶん、たいがいの日本人であるならば、引っ張られてしまうでしょう? とくに、今までそういうことを知らなかった「日本人」ならば特に。

 その中で、イーストウッドが、そういうことを切り離して、人類史的な視点を持って作れる監督がいないと判断し、でも「クロサワなら・・・」と言ってたのも、シェイクスピアを戦国時代に当てはめて考えて表現出来る黒澤明なら、イーストウッドの狙いが叶えられると思ったからじゃないでしょうか?



 ほかにも、「万歳」の仕方だけで、そこにある想いを表現したりとか、今の、マンガなどのような直接的な表現に慣れすぎた日本人が忘れてしまった日本表現の「良さ」を、すばらしいと感じた外国人ならではの表現がたくさんありますので、もし世界を見据えた表現者になりたいなら、勉強しても損はしない作品、だと思いますよ。
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