死ななきゃOK

死んだ方がいい、死にたくない、いろいろあるかもしれんけど、とりあえず、死ななきゃOK。っていつも言えたらなぁ・・・

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2005.05.29 23:56
藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 (4)
図書館で「藤子・F・不二雄 SF短編PERFECT集」の第四巻を借りた、というネタレビューをしたけど、今回はマジレビューをする。正直、笑えるポイントはない。
⇒ネタレビューはこちら

藤子・F・不二雄(以下藤子F先生)は、言わずとしれた『ドラえもん』とか『キテレツ大百科』など児童向けマンガで有名な漫画家ですが、少年向け・大人向けのSF短編(読み切り)マンガも違ったテイストが出て評価が高いです。
児童作家だから大人向けになっても同じように大人版「どこでもドア」が出るかといったらそうではありません(これはどの『児童作家』にも言えることです)。

むしろ、「暗くねぇ?」という作品もあります。でも、「なにやら不思議な」イベントを通じて、ドラマを織りなすと言う点では、ドラえもんなどの作品に共通している部分であります。藤子F先生の「SF」は「すこし・ふしぎ」の略だという話ですが、藤子F流のファンタジー観がそこに現れています(ちなみに、SFはサイエンス・フィクションの略)。
そんな作品を集めたSF短編集の第四巻を今回レビューするわけです。
この本に収録されているのは、
・カンビュセスの籤(くじ)
・ユメカゲロウ
・考える足
・オヤジ・ロック
・宇宙人レポート サンプルAとB
・ぼくは神様
・スタジオ・ボロ物語
・未来ドロボウ
・宇宙人
・あのバカは荒野をめざす
・老年期の終り
の11作品です。一番はじめの『カンビュセスの籤』は暗く、重い作品なので「ホントに藤子・F・不二雄?」と思わず表紙を見たくなるほどのショックを受けるかもしれません(絵は間違いなく藤子F先生なので実際しませんが)。衝撃的な作品なので、ファンの間でも『ミノタウロスの皿』と並んで評価が高いようです。
それ以外は、基本的に「若さ」と、それがもたらす「希望」を描いた作品が多いです。発表が少年誌だった作品が多くあるのも、そのせいかもしれません。


『ユメカゲロウ』『考える足』『ぼくは神様』は基本的に少年誌向けのストーリーで、着眼点、話のまとめ方も藤子F先生の代表作『ドラえもん』に通じるものがあります。

『未来ドロボウ』もそれに相当するのですが、この作品は大人になってからも是非読んでみたいという作品です。
主人公はいわゆる受験戦争に熱を上げる男の子。出世願望があり、それに熱を入れるあまり、友人関係などをおろそかにしがち。そこまでならありがちな話だが、そこからの展開が藤子F先生流。(ネタバレのため反転:脳の研究をして大金持ちになった余命幾ばくもない老人と、大金持ちになりたいと願う主人公の間で人生を入れ替わる取引が行われる。記憶を交換した主人公は念願のお金持ちになったが、孤独さと未来のなさに愕然とする。何でも叶えられるはずなのに、何かを叶えようとは思えなくなる。一方、若さを手に入れた老人は「若さ」、そして「生きること」を心から実感し、喜ぶ。何もかも手に入れたかのように見える生活でも、こんな喜びはなかった・・・幸せすぎる現実を手に入れたが、逆に、少年の未来を奪ってしまったこの取引が、不公平だったと痛感し、少年に未来を返す

子どものとき読んだなら単なる道徳訓であっただろうストーリーですが、大人になればなるほどこの作品の意味がわかってくる。こういう手合いのストーリーは割とあるのだが、それが「自分が勉強しなかったから子どもには勉強して欲しい」という勉強熱を要求することにつながることもありがちだ
しかし、この作品では、主人公に視点をあてて、主人公が体験する苦悩は、主人公の置かれた環境によって作られていることが語られている(これはかなり高い作品技術)。ファンタジー作品は、体験できないことを疑似体験(追体験)することで、教訓を学び取る種の作品があるが、これはまさにそれ。これは説教くさくないことが重要で、この作品では主人公自身がした「不思議な体験」がこの作品から説教くささをとりのぞいている。
だから、強要はしないで、「これは読んでおけ」と手渡すぐらいで充分だと思われる(←誰に言ってんだ?)。

何かにぶつかってしまったとき、つい読みたくなる作品という意味でも、大人が読んでおいても損のない作品です。おそらく、そのためにこの短編集のサブタイトルにも選ばれているのでしょう。
f4_1.jpg
『未来ドロボウ』
本当の価値は、なくしてみないとわからない。自分の選択に後悔しても、やり直せるうちにやり直したいものだ。未来は、今だからあることなのだから。
このあとラストにつながっていくのだが、そのラストは、ぜひ自分の目で確かめていただきたい。


『老年期の終わり』『あのバカは荒野をめざす 』は、前者は少年誌で後者は青年誌掲載作品です。だが、共通するのは、無謀と知っていても未知のものへの挑戦する勇気というテーマになっております。(ネタバレのため反転:前者は宇宙開発のなれの果てが人類の未来への閉塞感を抱くという現実に、後者はホームレスという負け組になった現実に、未来へのポジティブな思考が失われている現実。そのなかで、どう考えても無謀とも思える挑戦に、将来後悔するように見えて仕方がないのに、それでもそこに未来がある以上立ち向かうという姿に、美しさを感じる老人

これらの作品からは、ホームレスに限らず、老人だろうが子どもだろうが、おじさんだろうが、根本的に欠けているものを見つけ出せるかもしれない。歳を取ったからと言って、未来の人間だからと言って、全能であるというわけではないという意味で色々と考えさせられる作品。人間が生きるということは、なんであるかと言うことも、考えさせられるかもしれない。

「生きがいがない!? だったらなぜ死なん!?」

若さ故に言えるセリフではあるが、若さも人間には必要なことなのだ。

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『あのバカは荒野をめざす』
これは、ホームレスに紛れ込もうとするルポライターをあっさりあぶり出すホームレスというシーン。こういったことは、キャラクターひとりひとりが人間であるという視点を持ち続け、「ホームレスは可哀想な人」という先入観にとらわれない視点がないと描けない。こういうところも秀逸であり勉強になる。


また、『宇宙人』『カンビュセスの籤(くじ)』は、終末思想の影響が色濃い作品です。
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『宇宙人』
『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』にも似たシーンがあった、70~90年代に漂うテクノロジーがもたらす弊害からの未来への悲壮感。当時は環境問題などという言葉が一般化してなかったから特にそうだろう。

『宇宙人』は、文字通り「宇宙人」を探すことに熱を上げる男が主人公の物語ですが、実はそれだけではありません(ネタバレになるから言わない)。宇宙探査も実現できる立場になり、宇宙船の乗組員としてある惑星にたどり着きます。そこで自分たちの星と同じような知的生命体がいるかもしれないという期待をもって探索しはじめ、この「宇宙人探査」の目的を知る。(ネタバレのため反転:ラストに明かされる「宇宙人」の壁画の藤子・F・不二雄流解釈としても興味深い。まさか二人の宇宙人の絵を、地球人に呼びかけ、慰め合う姿にまとめ上げるとは・・・我々はまたどこかの「宇宙人」になるのだろうか?

『カンビュセスの籤(くじ)』
紀元前5世紀、ペルシア・カンビュセス王の軍が侵攻した際に食糧難となり、人々が道の草、運搬用の動物などあらゆるものを食べ出して、くじで選ばれた人間まで食べた、という実際にあった(らしい)話が元になっています。そこから逃れた主人公と、藤子F先生流に未来の、たったひとりの人間が出会います。この二人だけの間で起こるストーリーだが、テーマは壮大。

読んでて怖い。最初、何が起こっているかさっぱりわからない作品だが、ストーリーが進む事に明らかにされていくというか、謎が少しずつだが「見えてくる」。でも、正確には語られないが、ラスト間際になって、ストーリー前部で語られたことが、一気にフィードバックされて、全体像が見えてくる。この時の恐怖は読んでないとわからないが、思わず逃げ出したくなるかもしれない。
(ネタバレのため反転:主人公は籤(くじ)から逃れることができた。しかし、迷い込んだ未来の建物の中でも、籤をひくハメになる。その目的は同じく、「人間が生きるため」。主人公はその場から再び逃げ出す。宛もなく荒野をさまよいながら耳に響く「生きる意味」。古代人にはわかんねーだろというツッコミはスルーして、自分が最初に籤から逃れたことと、次の籤がやっぱりあるということを改めて考える。そして、どうせ死ぬ身なら・・・と食べられる決心をするも、食べる側だったという結末。生きるのも死ぬのも紙一重で、死を覚悟しても、相手の死によって生きる方もツライという事実。「どうせ食べられるなら」・・・キツイセリフです

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なんか普通に驚いているだけの平凡な絵のように見えますが、ストーリーテリングが秀逸なので、そんなこと全然感じさせないのが、ただの人気マンガ家ではないのだということを証明しています。
一回目の驚きと、二回目の驚きで、コマの大きさ、表情の作り方、もって行き方、すべて驚きを与えるレベルあげています。ストーリー全体でストーリーを語るという手法は一流のみがもつ技術です。絵が全てではないという証拠であり、「作品は作品自体が演出する」という手法が用いられた作品です。


『宇宙人レポート サンプルAとB』は藤子F先生が原作のみで、絵は少女マンガという異色作ですが、視点は藤子チックです。
これも、人間とはなんであるかというのを、宇宙人の視点で描いていますが、この宇宙人の視点は「効率化」の権化のようでもある。「効率化」を考えたら人間とは信じられないことばかりやってる不可解な生物である、という視点でまとめているが、読者は、その宇宙人(という名を借りた「効率化」)とは違う地球人らしい視点でもってその作品を眺めることができる。すなわち、愛や友情のために命を投げ出すというコッテコテの人間くさいストーリーになっているわけだ。
愛情行為と効率化というテーマで読むものを探している人は読んでみるのもいいかもしれません。また、人間とは無駄なことばっかりしてるように見えますが、それが人間なのだと言うことなのかもしれません。


いずれにしろ、読んで損はしません。
「ドラえもん買うのは長いしちょっと・・・」という人は(いるのか?)、こういったSF短編で大人チックなテーマに触れるのも、いいかもしれません。藤子・F・不二雄で育った人には尚更、ね。私のトコみたいに図書館にあればいいけど、あんまりねーよなー。


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