死ななきゃOK

死んだ方がいい、死にたくない、いろいろあるかもしれんけど、とりあえず、死ななきゃOK。っていつも言えたらなぁ・・・

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2005.06.01 12:28
レビュー2:「マインド・シアター」の作品としての評価

 レビュー1:パビリオン概要
 レビュー2:シアターの作品としての評価
 レビュー3:シアターを観たあとに何を?
 レビュー4:「忘れられない体験=万博」への示唆

「これは赤十字の叫びである」

 このパビリオンを一言で表現するならこうなるだろうか?
 これまでこういった人道支援活動のビデオは、広報的なもの――視聴者が受け身になるだけのモノ――が多かった。「これこれこういう活動をしてますよ」とか「こういう歴史で人道支援をすることになったのです」とか「世界にはこんなに助けを必要としている人がいるのです」といったようなものだ。「ビデオ」というメディアの性質上そうなるのも仕方ないが、これで逆に遠く感じてしまう人も少なくないだろう。

 しかし、このパビリオンの中のマインド・シアターは、これまでのそのような広報ビデオとは少し違う「体験」になるかもしれない。「マインド」と名がつけられたように、直接心に訴えかける趣向をこらしたシアターであるからだ。
【構造的な部分の特徴】
 このシアターは40人ほどが一つの部屋に入り、上部にある4面スクリーンを見上げる構造になっている。しかし、円形の室内の周囲を傾斜のある背もたれ付きのソファー(しかも座面の奥行きが様々)が囲み、中心に背もたれのない、寝そべって観るソファーが用意されている。このソファーのデザインは、見た目だけではなく、参加者の「状態」を変えることに成功している。
 傾斜のついた背もたれにもたれかかったor寝そべった状態だと、視線の先が自然と上を向く。通常、上部にあるスクリーンは「スクリーンを見上げる」という不自然な行為を要求するモノなのに、それを自然な行為にするための工夫が背もたれに隠されているというわけだ。
 また、傾斜があり、柔らかさもある背もたれはリラックス効果をもたらすということで、入ってくる情報に対してヘンに構えたりせず、「疲れ」がもたらす集中力の欠如というものも起こりにくい状態になる。すなわち、心でとらえようという意識がはたらきやすくなるわけだ。


【内容】
 映像は、実際は広報ビデオとほとんど変わることはない。世界に紛争が溢れ、災害の前に立ちつくし、難民が溢れているといったものだ。そして、赤十字・赤新月はそのために活動している、というもの。BGMはミスチルことMr.Childrenの『タガタメ』が流れ、ときおり赤十字をイメージした映像や、映像にあわせて特殊効果が施されるが、ムリなCG化はしていない。純粋に、映像が「現実」を映し出しているから、変に脚色しないほうがいいのだろう。


【映像の視点の特殊さ】
 視点がいつもと少し違う。根底にあるのは、赤十字・赤新月はあくまでも「そこに住む生活者」という主人公である彼らの生活にフォーカスをあてている。本来ならなにも問題なく生きることができた彼らには、災害や戦争など周囲の人だけの努力だけでは救えない現実が目の前にやってくる。そして、それを行うのが、赤十字・赤新月であり、彼らがまっとうな生活をできるようにするための手助けをしているだけ、という態度だ。
 ここには、赤十字・赤新月が必要な理由は語られているが、教条的な説教くささはほとんど感じられない。視点を生活者にあてることによって、赤十字の活動は、われわれのような平和な国に住む日本人にもすんなり理解することができる――「ここに助けが必要だよな」ということだ。
 もちろん、テーマは重いの一言だが、「足をなくした人」は日本にもいるということを忘れてはならない。しかし、忘れてしまっているのも事実だ。


【音楽と特殊効果】
 また、音楽や特殊効果の使い方も巧妙だ。
 ミスチルの『タガタメ』は殺傷事件や紛争をモチーフにして作られた歌であると聞いている。それ故、普通に聞くには重い歌となっている。生半可な映像では合わせることができない(カップヌードルのCMで使われたときも紛争をイメージしていたが、CMなので一部だ)。それが、これ以上ない重い現実と日々向き合っている赤十字・赤新月の活動と実によく合う。
 もともとミスチルはこういった真面目なテーマに合う曲と声をしているので、聞いていても不自然さを感じることはない。紛争と日常との差が激しすぎる我々日本人が感じることを、巧みに歌にまとめ上げている点もこの映像と実によく合い、我々の心に染みいる(それ故に紛争国の人は感じ方が違うかもしれない)。この曲が発表されたのは2003年、当初はラジオでだけの発表だった。それを考えるだけでも、この映像の制作者がいかに真剣に作ろうとしていたのかが伺えるだろう。


【シアターという体験、作品性】
 そんな音楽を聴きながら、そして、シアター全体で特殊効果(光・効果音など)を施し、「リアルな」映像を観ていると、観ている者に、こういった体験をさせていく。

 悲惨な映像を観て、何かを叫びたくて
  言葉にできないとき、歌がそれを代弁する
 希望の映像を観て、幸福に感極まって
  言葉にならないとき、歌がそれを代弁する

 これは観た人にしか理解できないかもしれない。
 とにかく、観ているだけで引き込まれ、心がそういった状態になっていくのだ。リラックスした環境と映像と音楽と特殊効果が、心のガードを外した人々の心に触れだしはじめるとでも言おうか。他のパビリオンのように「モラルに訴えかける」のではなく、「心に訴えかける」のでこの映像が単なる「広報」でなくて「作品」になる。狙っていたのかどうかはわからないが、歌になにがしらの力があり、それはただ「感動させる」ためだけにあるのではない、と思ってこの作品を作ったように感じられる。

 即ちこれは、赤十字社の「叫び」なのだ。だから、作品になる。

 自分たちがしていることに矛盾を感じながらも、「ただそこに支援を必要としている人がいる」という理由で人道活動をしている赤十字・赤新月は、おそらく他の誰よりも「反戦」を叫びたい人間たちであろう。しかし、あくまでもそれを強要はしない。むしろ、「(反戦運動だけを)してはいけないのだ」という意志が見て取れる。
 「反戦」というメッセージ性をこめるということは、自分たちが無二の正しさを押しつけるという危険性がある。紛争に対する分析のひとつに、その「押しつけ」にが起こしているという分析があるからだ。おそらく現場でそのこと(戦争を無くすための戦争とか)を実感する赤十字は、一番わかっているのだと思う。だから、描き方が「戦争や災害があっても助け合って生き抜く人々」という作品になっている。赤十字・赤新月が必要なものではあるけど、その正しさを証明しようという意志は感じられない。また、それぞれが、真剣にやっているという現実を観ているからでもあろう。ただ、赤十字が日々向き合っている現実を体験・体感してほしい、そんなようにも見える。
 

【現実と非現実の間で】
 これまで、人道支援家たちは、自分たちの人道支援が理解されないことをモラルに訴えかけてきた。これは国連やNHKのドキュメンタリーにもよく見られる傾向だ。しかし、傍観する人々はそこに自分たちのいる現実と、赤十字・赤新月が直面する現実との間に大きなギャップを感じるしかなかった。それゆえに、理解されないのだ。モラルがないというわけではない、どうしていいかわからないのだ。
 この作品は、そういったジレンマを難しく考えず、本来の自分たちの行動を、そして行動を支える精神(理念ではない)にフォーカスをあてた。「そこに助けを必要としているから、助けに行っているだけ」――これは平和な国に住む我々日本人でも理解できることではないのだろうか?

 赤十字・赤新月は、この作品で、そういったことを叫んでいる。それは『セカチュー』とさして変わらない。これが、普段こんな映像をわざわざ見ないという人々を引きつけてやまない理由だろう。

 また、このシアターでそういう体験をしているうちに、「遠い存在だった赤十字・赤新月」が、平和な国に住む平凡な我々と「想いは同じである」ということに気づかせてくれるのだ。こんな経験、そうできるものではない。
 真面目で重いテーマを扱った映像は、とかくオブラートに包んで事務的に伝えたり、お涙頂戴物の感動話としてまとめることが多かった。前者は「広報」として、後者は好きな人しか見ない「企画」として歩いていた。しかし、これは「作品」になっている。それだけに、不特定多数の人に強烈な印象を与える。これは、「人道支援の現状を知っている人(=ニュースなどで広報的に知っている人)」であっても変わらない。これが本当のインタラクティブ(相互作用)なのかもしれない。

 真面目な作品を、人々に見てもらおうとするためのひとつの完成型がこの作品にはある。「真面目だから見ないだろう」と思っていてはいけない。それを、心に、素直に届けようとしてないだけだ。受け手も人間である。伝えては、自分たちの報われない努力のために、「わかってくれないのではないか?」と思いこみすぎていたのではないのか? 本当はそうではなかった。ただ、観ている人にとって「非現実」すぎて、思考が停止していただけなのだ。
 トラウマになりそうなこのシアターに、老若男女の人々が次々と足を運ぶ現実を見ると、そう思い出させてくれる。


 しかし、それ故にもつ危うさもある。この作品が強烈すぎるのだ。この作品を観て、広報の内容をより心に刻みことになるのは、赤十字・赤新月の理解にとってもいいことなのだが、「じゃぁどうすればいい?」という状況になる人が多くなると思われる。それが解消できないと、心に重くのしかかる。
 その点についての、作品と絡めた考察は次回に送る。

⇒シアターの詳細と評価であるレビュー(3)へ

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